“不動産投資”と聞いて連想しやすいのが、この「資産運用」パターンです。「アパート経営」や「賃貸経営」と言えば、もっとイメージがつきやすいのかもしれません。
分かりやすいのが、親から収益物件を引き継いだ大家さんのケースです。
建物に対してのローンを親の代で払い終わっていれば大きな出費はありませんから、「不動産」という手持ちの「資産」を「運用」して日々のキャッシュフローを生み出すことができます。
あるいは、土地だけを引き継いでその上に新しくアパートを建てた場合でも、土地ごと収益物件を購入したケースに比べ利回りは大幅に上昇しますから、エリアや規模によっては建物のローンを払い続けたとしても十分な資金を手元に残すことが可能でしょう。
これが一般的に考えられている“大家さん”のイメージで、まさに「家賃収入で左団扇」のパターンです。
確かに、世の中にはこうした恵まれた境遇の方もいらっしゃいます。生まれながら大家になれる資格を持っていたという極々稀なケースです。
しかしながら、そんな方でなければ「資産運用」パターンができないかと言えば、実はそんなことはありません。
今現在は土地や建物を持っていなくても、ローンを上手に活用して収益物件を購入することで、「資産運用」パターンが実現できる可能性があります。
その場合のポイントは物件の「規模」です。
具体例を挙げて考えてみましょう。わかりやすくするために計算は簡略化します。
《モデルケース》
物件価格:3,000万円
利回り:7%
借入金額:3,000万円(フルローン)
借入期間:25年
借入金利:2%
このような形で不動産投資を始めた時、その人の手元に残るお金はいくらになるでしょうか。
まず年間の家賃収入ですが、物件価格3,000万円で利回りが7%ですから「3,000万円×7%=210万円」となります。それに対し、金利2%で3,000万円のアパートローンを25年間借りた場合、毎年の返済額は約154万円です。
両者の差は56万円。毎月に直すと4.7万円程度ですから、さすがにこの物件で「左団扇の生活」は難しそうです。実際にはここに修繕費や管理費などの「経費」、さらには家賃収入で得た不動産所得に対する「税金」がかかってきますから、キャッシュフローはより厳しくなるはずです。
それでは、もし物件価格が3億円だったらどうなるでしょう?
他の条件が同じであれば、年間で手元に残る金額は単純に10倍の560万円。「左団扇」までとはいかなくても、「経費」と「税金」を引いた上で生活費として十分当てにできる収入と言えそうです。
不動産投資には様々な形がありますが、このように「物件規模の大きさが、ローンの負担以上の収益を生み出す」というケースも考えられます。
「それじゃあ、なるべく大きな金額の物件を購入すれば良いんですね」と思われた方、ちょっと待ってください。
残念ながら、そんなにうまくはいかないかもしれません。
「借金」という他人資本の力を借りて運用効率を高める、いわゆる“レバレッジ効果”。不動産投資には欠かせない要素とも言えますが、実は誰にでもこの力が使えるわけではありません。
反対側のお金を貸す立場から考えてみると分かりやすいでしょう。
お金を貸す金融機関にも、当然思惑があるはずです。融資をする以上、万が一ローンが滞った場合でも、「最悪でも貸した分だけは回収したい」というのが彼らの本音であることは間違いありません。
そんな彼らが、実際に3億円を貸してくれるのはどんなケースでしょうか。
「その物件に3億円以上担保価値がある」
「その物件以外に3億円程度の担保価値のあるものを所有している」
「空室が多くなってもローン返済が滞らないほど他の収入を維持できる」
などが考えられますが、一般的に考えてこれら条件を満たすのはなかなか難しそうです。
昔から「借金も財産のうち」などと言われていますが、やはり現実問題として大きな金額の他人資本を調達できるのは、ある程度の資産がある方、あるいは高収入な方に限られてしまうというのは動かしようのない事実です。
実際にいざ不動産投資を実行しようと思っても、融資問題でつまづいてしまうというケースは枚挙に暇ありません。
それでは、「土地や建物がない」あるいは「余剰資金ない」という人は、不動産投資を始めることは不可能なのでしょうか?
そんなことはありません。その場合は、不動産投資へのアプローチ方法を変えれば良いのです。今手元に不動産や資金がないのであれば、なにか違う「別なもの」を自分の味方につけましょう。
そのアプローチ方法においてあなたの味方になってくれるのは、「時間」と「他人資本(=借金)」です。
この両者を味方につけて不動産投資を行う方法、それがもう一つの「資産形成」コースです。